
磁力による非破壊検査でインフラを守るSenrigaNのご紹介
はじめに
こんにちは、AIセンシング開発部の大原です。
AIセンシング開発部では、デバイスを活かしたIoTセンシング×AIをコア技術とした新規事業開発を行っています。顧客起点で社会課題に着目し、スタートアップマインドとオープンコラボレーションでスピーディーに開発を進めるのがAIセンシング開発部の特徴です。また、お客様と共創で開発を進めることで、技術一辺倒ではなく、事業化を意識して、現場で使えるもの、特に使い勝手やユーザーエクスペリエンスを考慮したソリューションの開発を目指しています。
こうした手法で生まれた新規事業の中から、今回は、社会問題になっているインフラメンテナンス領域において、特に橋梁点検に焦点を当てた「SenrigaN」について皆さんにご紹介したいと思います。
開発の背景
皆さん、メディアでもお聞きになった事があるかもしれませんが、日本には70万を超える橋があります。一般的な耐用年数は50年とされているのですが、2025年には約40%が、2035年には約70%が耐用年数を超過してしまいます。
国交省は2012年12月に発生した中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故を契機に,2013年を「社会資本メンテナンス元年」として位置付け、道路、橋梁、トンネル等のインフラの定期点検が法定義務となりました。
国や地方自治体などのインフラ管理者は2m以上の橋に対し5年に1度目視と打音(*1)で検査することになっています。しかし、この法定点検だけではコンクリートを補強する内部の鋼材が破断しているかまではわかりません。
(*1 打音検査とはコンクリート表面を打音ハンマーで叩き、その音でコンクリートの浮きや剥離等の損傷を発見する検査のこと)
特に「プレストレストコンクリート」といって、鋼材の引張強度を利用して予めコンクリートに圧力をかけて強度を保っているタイプの橋では、鋼材が破断しているかどうかは死活問題です。
これまで鋼材が破断しているかどうかを確認するには、橋を少し壊して中をのぞくのが一般的でした。しかし、この方法は橋の強度を低下させてしまうため、あまり多用することができません。また、非破壊のX線検査もありましたが、X線を扱う危険性や検査自体の大変さなどのため、1日に数か所しか検査できず、高価な検査となっていました。
そこで、こうした社会課題を解決するため、コニカミノルタでは磁気を利用して簡単に非破壊で内部鋼材を検査するソリューションを開発しました。
これにより橋を壊すことなく1日に100か所程度の検査が可能となり、より正確に内部の状態を把握できるようになりました。
また、お客様と一緒に開発することで検査現場のワークフローに即した開発を行うことができました。特別なセッティングは不要、検査員1人で軽く扱えるサイズと重さ、装置をあてるだけで誰でも簡単に検査できる作業性。検査結果は自動でクラウドに送信され、その場で確認できる利便性。こうしたことを実現するのが実はとても重要なんです。新たな技術というのは兎角性能は良いけれど使い勝手が悪くなりがちです。しかし、これを両立しないと市場には受け入れられません。こうした努力で、少しずつ使ってくださるお客様が増えていっています。
計測原理
ここからは少し技術の話をしましょう。
コンクリート内部の鋼材は主に鉄でできています。みなさん小学校の生活または理科の授業で釘に磁石を近づけると、釘が磁石になる実験をやりませんでしたか?基本原理はあれと一緒です。
そもそも鉄には磁力が存在しているのですが、自然な状態ではその方向がランダムなため、打ち消し合って磁力を発生しません。そこに外部から磁力を当てて、向きを揃えることで磁力が発生するのです。これを「着磁」と言います。
鋼材が破断していない場合は1本の棒磁石のように、破断している場合は破断点でNとSが向かいあう2本の棒磁石のようにふるまいます。
これを3軸の磁気センサによって検知すると下図のような特徴的な波形が現れます。
検査システム
SenrigaNで磁束密度を測定するとデータは自動的にクラウド上へ送信されます。
また、データの保存、データ解析、グラフ表示などは開発した専用のアプリで行います。
デバイスに依存しないブラウザアプリのため、測定したその場でスマホ、タブレット、PC等、お手持ちのデバイスで結果を確認することができます。
これにより迅速な検査と判断が可能になり、怪しいグラフが見られたら、位置をずらして再検査するなど、検査精度の向上にもつながっています。
将来的には、クラウド情報にデータが蓄積され、他点検での画像情報や、気候や地理的な情報、こういった情報も網羅されてくると、検査しなくても、劣化が予想される世界を作る事ができるかもしれません。
ただ、いきなり飛躍は難しいので、まずは、一歩一歩、確実にお客様に使ってもらう事を意識して、「現場で使えるもの」を開発しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
コニカミノルタはこれまで「見えないものを見える化する」という分野において、数々のソリューションを世の中に送り出してきました。
SenrigaNはこのDNAを引継きながら、顧客価値起点でお客様、大学、開発パートナーとオープンコラボレーションを積み重ねて開発された新規事業です。
社会インフラ老朽化の問題は、実は日本だけでなく世界共通の社会課題なんです。
こうした問題の大きさもこの事業を始めた理由の一つです。皆さんもコニカミノルタで社会課題を解決するような新規事業開発・技術開発をしてみませんか?
(おまけ) 余談にはなりますが、SenrigaNのネーミングにも強いこだわりがあるんです。
皆さん想像つくかもしれませんが、SenrigaN=センリガン=千里眼
将来も見通せる事ができる、つまり老朽化している橋梁の致命的なところを見つけ、安心安全な社会にしたいという想い。
そして、SとNがなぜ大文字かといいますと、まさに磁石のSNで、その間をセンシングするという磁石がコア技術である意図があります。
そして、ロゴの下部にある点々は、橋梁の鋼材を意味しており、〇の箇所を破断に見立て、センシングで検知するといった、実はネーミングとロゴで、我々が伝えたい事が網羅されております。
現場で検査する時など、おーい、SenrigaN持ってきてーとか、一般的な名称になるとうれしいですね。ネーミングやロゴ一つにしても、遊び心を持ちつつ、強い想いを持って、日々事業の成長にチーム一丸で取り組んでいます。
コニカミノルタは画像IoTプラットフォームFORXAIを通じて、お客様やパートナー様との共創を加速させ、技術・ソリューションの提供により人間社会の進化に貢献してまいります。
新卒採用については以下の採用情報ページをご覧ください。
中途採用に関する情報については以下の採用情報ページをご覧ください。